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12月に入り、街は美しく輝くイルミネーションに彩られ、絵本の世界に迷い込んだかのような装いを呈してしる。
吐き出す息は白いのに、誰もが幸せそうに笑って見えるから不思議だ。
特に今日みたいな週末、沢山の店が並ぶ市の中心とも言えるこの辺りは人々の笑みで溢れかえっていた。
勿論、
「純(ジュン)!」
俺もそのうちの一人だけどね。
寒さから逃げるように左のポケットに手を突っ込んだ俺の腕を引っ張って名前を読んだのは、彼女の明里(アカリ)。
「ん?」
「ん?じゃないっ、さっきから呼んでたのにー。何か見てたの?」
拗ねたように口を尖らせる顔も可愛いくて、俺はつい顔を綻ばせた。
「ごめん、ちょっとバンドのこと考えてた、っと、すみません」
明里と、すれ違い様に肩をぶつけた人に謝り、苦笑いしながら頭を掻けば明里は諦めたようにふぅと息を吐いた。
「純はいつもそうなんだから。……ま、もうすぐだもんね、クリスマスライブ」
楽しみーと笑みを浮かべる明里だから、俺たちは上手くやっているんだと思う。
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