11人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
イブに行うライブの前日、最終の音合わせをしたあと俺はその足で以前見たコジャレた家具店へと向かった。
俺の決意を、買うために──
「すみません、これ、下さい」
背中にはギターケース。
胸にはナチュラルカラーの木で出来た一脚のイス。
『お持ち帰り、ですか?』
なんて店員にも驚かれた程の大荷物。電車に乗るのはちょっと恥ずかしい。
でも配送にはしたくなかった。これは今日俺が渡すことに意味があるんだ。
線路沿いにある安アパートまでの道のりを、自然と軽くなる足取りで歩いていく。
何て言うかな?……『何で一つ!?』って突っ込んできそう。や、『おっき過ぎでしょ!』とかかな。
でもどんな言葉でも明里は笑ってくれる。
それがわかるから、俺はまた足を少し早めた。
『はい』
「俺ー開けてー」
いつもなら鍵を開けて勝手に入ってくんだけど、今日はあえてチャイムを鳴らしてドアが開くのを待つ。
「お帰りーって、何それっ!?」
ドアが開いた瞬間、赤いリボンのついたイスを覗かせれば案の定明里はその目を丸くして。
「メリークリスマスイブイブ」
「……ちょ!プレゼントスゴ過ぎでしょー!」
破顔した。
最初のコメントを投稿しよう!