11人が本棚に入れています
本棚に追加
事故、だった。
準備もあって前入りしてた俺より遅く会場に向かっていた明里は、スリップして歩道に突っ込んできたバイクに跳ねられた。
『ホワイトクリスマス』
そんな美しく神聖な夜を、これほどまでに恨む日が来るなんて。
こんな形でお前を失うなんて、思っても……なかった。
泣いて、泣いて、泣き尽くして。
涙が渇れたあと、俺の毎日は色を失った。
あれだけハマってたギターも握ることすらなくなって。
ただ毎日を何となく過ごして。
気がつけば、あれから三年が過ぎていた───
今年も、街はいつもの歌が流れている。
紅白の服を着た白髭のじいさんがそこらに溢れ、色とりどりの電極が木々を飾り。
行き交う人の笑顔がやたらと乾いて見えた。
運良く就職できた俺はスーツに身を包み、駅へと向かう。
ただ家に帰る為に。
──そんな時だった。
「純!」
聞こえたのは懐かしい、声。
……え?
思わず顔をあげる。
そこには見間違えることのない『二人』。
「ごめん、ちょっとバンドのこと考えてた、っと、すみません」
肩がぶつかる。
あの頃の、俺と。
今のは……幻……?
呆然とした頭で立ち竦む。
振り返えって確認する勇気は、なかった。
最初のコメントを投稿しよう!