ACT.1 怒らないから話せと言われ、話したら怒られた件について

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「あ"ぁ~もぅ…… これだからザルは嫌いなんだ」 掛け布団と枕を持ち、 紫の空の下、 探偵事務所へと帰ってきて ソファーに寝転んだ。 「うぇ……もぅ……飲めない……」 狐牙の予定通り、店のお酒は全て売れて 無くなりママには感謝されたが、そこに 至るまでひたすらドンチャンを楽しんで いた集団。 夜中には終わるだろうと踏んだのに、 実際に終わったのは朝方。 孤牙の体力はすでに限界を迎えている。 「ん……っ」 マシュマロに包まれて眠る。 それは狐牙によって唯一の至福。 ピロロロ…… 至福の ピロロロ…… ピロロロ…… 時。 「はぁ~……」 手を伸ばして机の上に置いてあった 固定電話の受話器を手にした。 「もしもし、狐牙探偵事務所です」 「もしもし?俺だけど」 いつもなら声で判別できる筈なのに、 眠すぎて思考が回る事なく…… 「私に子も孫も居ません」 「寝ぼけてるな、まぁいい。 事務所の前まで来てんだ、 鍵開けてくれ」 「ん……開いてるから勝手にどうぞ……」 「開いてるって……」 ガチャ 「あっ、本当だ。ったく不用心な」 入ってきたのはさっきまで一緒にいた 若頭。 「詐欺はお断りですよ~」 「んな訳ねぇだろ。ほれ、差し入れだ」 「何?」 「ウコン」 「うわぁ~ぃ、アイラブウコンスキ!! ウコン大事なぁ~」 机に置かれるなり袋をあさって ゴクゴク喉をならして飲みきった。 「ぷはぁ~生き返るね~」 「そりゃ良かった。 で、仕事の話なんだが」 狐牙が寝そべるソファーの肘置きに 押しを下ろし、ローテーブルに置かれた 空き瓶をゴミ箱であろう段ボール箱に 向かって投げた。 「あんたを組長にしないために一肌 脱げって言うあれ?」 狐牙は布団を被り身体を小さく丸めた。 「あぁ」 「無理だね」 「はぁ!?何でだよ!!」 「大体さ、組を抜けたきゃ 好きにすればいいじゃないか。 探偵に頼むのは間違ってる、 ここはお悩み相談所ではなく た・ん・て・い・しょ。 探したり偵察するのが仕事なの、 分かったら帰りやがれ」 手だけを伸ばして追い払う。 それを見た若頭はため息。 「探偵ってさ、地域の見方じゃねぇの?」 「それは警察」 「人ん家の庭を掃除したり、」 「それは家政婦」 「店に悪い奴が来たら追い払ったりさ」 「それは用心棒」 「じゃ、お前ってな――」 バサッ 「みなまで言うな、背に腹は変えれん」 急いで起き上がり言葉に割り込んで、 立ち上がった。 「オレンジジュースでもいい?」 「あぁ」
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