ACT.1 怒らないから話せと言われ、話したら怒られた件について

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「変なプライドだと!?」 眉間にシワを寄せ狐牙を睨むが、 狐牙は至って真面目に答えた。 「だっておかしいじゃん。 自分の幸せの為に人の幸せを 邪魔するんでしょ?」 「しゃーねぇだろ!? 初めは継ぐ気だったのに、 ここまで来て他にやりたい事が できちまったんだから……」 狐牙は興味津々に問う。 「なになに!?」 「言えるかんなもん!!」 頬を赤らめてそっぽを向くが、 狐牙は若頭に近づき上目使いで 自分なりに可愛らしい声を意識。 「教えてくれたら依頼を引き受けるよ」 言葉を詰まらせた若頭はだったが、 携帯灰皿を取り出し、煙草の火を消すと ため息をついて、狐牙をちらみ見た。 「誰にも言わねぇか?」 「個人情報の取り扱いは、 探偵の一番気を付けるべき所であり、 最優先事項でありまする」 敬礼をする狐牙に失笑。 頭を2、3度ポンポンと叩いて ソファーに座った。 「俺はある人を探していた。 5年前の事だ。土砂降りの雨の中、 初めて喧嘩をして負けたんだ。 親父に顔向けできなくて途方にくれて いた時、一人の女が俺に傘を差し出し 家まで連れて帰ってくれた。 錆びれ、目立った家具もなく、 独り暮らしの家で俺はホットミルクを 御馳走になり、一緒に謝りに行って もらった。 他の連中に引けを取ることなく、 堂々とした態度で親父に土下座をして 俺が負けたのは、その現場を目撃した 自分を助ける為だって言いやがった」 「全く情けない話だね~」 やれやれと言わんばかりに、左右に首を 振ると、すかさず狐牙の頭を鷲掴み。 「人の話は最後まで聞け!!」 「はい……」 「その後、名前も聞かずに別れて、 再度家を訪ねたがもの抜けの殻。 夢かとも思って忘れようともしたが 忘れられなかった。 そして、最近になって彼女を見つけ、 1人で暮らしていることを聞き、 できれば傍に居てやりてぇんだ」 「ようは恋をしたと」 「お前な、もっとオブラートに包めや」 指先に力が込められるとギチギチ しまっていく頭。 「あぁ……これ以上……馬鹿には…… なりたくなかとです」 「おぉ~、馬鹿と言う認識は あったんだな、偉い偉い」 「いたたたたたっ!!!! 褒めるなら手を外しやがれ!!」 ウガァ!! 孤牙は若頭に狐パンチを炸裂させ、 手を払い除けた。 「あんたみたいなのに好かれちゃ 女の子も良い迷惑だよ!!」
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