ACT.1 怒らないから話せと言われ、話したら怒られた件について

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「もう!!いちいち話の腰を折らないでよ」 「いや、どう考えてもおかしいだろ」 「おかしくないもん。 前にクライアントが持ってきた服で パーティに行ったの、その時に 捕まえなきゃいけない人が現れて、 追い掛けてたら、靴は無くなるし、 服は破けるし、借り物だったから 損害賠償は請求されるしで良いこと 無かったから、付け加えたの」 「あぁ~……なるほど」 「納得したら黙っといて、 気になったら後で聞くから」 「分かった」 そんなやり取りは狐牙が 契約書100読み上げるまで続き、 終わる頃には日は傾いていて、 「で、どうする………? 契約……書に、サイン……する?」 「まぁ……いいだろ。条件を飲む」 2人ともヘトヘトになっていた。 若頭は狐牙が持つ契約書にサインと 印を付き携帯でどこかに電話。 朝からそんなに寝てなかった孤牙は 契約書を受けとることができずに ソファーで深い眠りについていた。 狐牙が次目覚めた時はあいにくの雨。 湿気が充満するコンクリートハウスは 良い香りが漂い始めている。 キッチンに目をやると若頭は自ら フライパンを握り、その舎弟と思われる 人達は狐牙の見知らぬ家具を運んでは 梱包を外す作業をしていた。 「あっ、おはようございます姐さん。 もうすぐ朝御飯ができますので、 先にシャワーをどうぞ」 そう言って見知らぬ男性に 差し出されたのはこれはまた 見知らぬバスタオル。 狐牙が持つどのタオルよりも フワフワでさわり心地が良い。 「でさ、これは何事……?」 頭をくしゃくしゃと交ぜながらも 状況把握をしようと思ったが、 人数の多さと、どこから突っ込めば 良いのか分からず、指を差した。 「若頭に昨日の詫びをしろと言われ、 ご用意させていただきました」 「あぁ……さいですか……」 前から置いてあった物はそのままに、 新しく追加されたのは木目調のあきらか キングサイズはあろうベッド、その下に敷かれた部屋の半分を占拠する絨毯。 偶然にも狐牙が好きな黄色。 そして、見慣れない小さな機械。
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