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──ズシは無事だった。ズシの毛についた血は、彼の血ではなく、傷もなかった。
異常がないとわかるとシャワーでズシの体についた血を洗い流したそうだ。
父がズシを動物病院に連れて行き、念のため入院の手続きをしている。
あたしは宇田の車で自宅に戻り、母から事の経緯を聞くと、一度家を出た。
そして、家の近くに停めた宇田の車に戻った。宇田には車で待つよう言っており、彼は車内でスマホをいじっていた。
あたしは運転席のウィンドウを爪で強く叩き、SCMを掲げた。
「本当にズシに血をかけたのは、あんたじゃないの!?」
「……い、イライラしているのですか?」と宇田が怯えた様子で言った。
「別に……! いいから答えて!」
宇田はぶるぶると薄い頬を振った。
「エイア様のワンコに危害など……め、滅相もありません。エイア様の住所は知りませんでしたし、それにずっと新宿にいたじゃありませんか、一緒に。私めにはアリバイがあります」
──新宿から立川まで送ってもらう間、宇田から事の経緯を聞いた。
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