時の女権力者

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 その美貌は噂となり、公家や武家からの求婚者が後をたたなかったが、幼き頃よりこの身は仏に仕えると決めていた彼女は、縁組を全て拒み、父を説き伏せ、仏門に入った。  若き身空で…と出家を惜しみ嘆く者も多かったが、彼女はようやく仏に仕えられる事を喜びに思っていた。 「明後日には、江戸の将軍、家光公へ跡目御礼のために江戸城に参らねばなりませぬ。仕度がまだ残っておりますゆえ、中に戻りましょう」  慶光院は柔らかく微笑む。 「はい。慶光院様!」  お玉は元気良く答えると、慶光院の後ろを追うように駆けた。
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