籠の鳥

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「上様、今日は伊勢の慶光院、新院主が跡目御礼の為、拝謁の儀がございます」  春日局は総触で、家光に告げる。 「分かった」  ただ一言そう答え、家光は退屈そうな顔をした。一転、珍しく明るい顔で御台所、考子が呟くように言う。 「ほう…慶光院殿が」  ふっと口元に意味ありげな笑みを浮かべた後、 「今日は良い日になりそうや…なぁ、そう思いますやろ?上さん」  と、家光を見る。 「うむ」  頷く家光だが、その顔は相変わらず人形のように無表情だ。春日局は ただ微笑み、奇妙な将軍夫妻の様子を見つめていた。
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