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孝子は何も答えず、わざとらしい欠伸をした。
「御台様はお疲れのご様子。私はこれにて失礼致します」
春日局はスッと立ち上がると、掻取を滑らせ、退出する。
ホホホホホと、嘲笑うかのような孝子の笑い声が耳の中でこだまして離れなかった。
その日の深夜、人が寝静まったのを見計らい、春日局は自室に人を招いた。
「お呼びでございまするか?春日局様」
「よく参りました。初島、折り入ってそなたに話しておく事があり、呼びました」
春日局が言うと、初島が訝しそうに顔を上げた。
この初島という奥女中は、幼い頃、遊郭に売られそうになっていた所を春日局に助けられ、春日局の部屋子として大奥に上がった。
春日局を命の恩人と慕い、今では中年奇(※大奥組織の中でも幹部に当たる役職)として、春日局の腹心の部下でもある。
「お話というと…?」
「ここだけの話…そろそろ上様の側室探しを始めようと思う」
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