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「慶光院様!庭の菖蒲が見事に咲きました!こちらに来てごらん下さい」
明るくはしゃぐ声に、若き尼僧は微笑んだ。
「お玉、あまり騒ぐと周りにご迷惑がかかりますよ」
穏やかで澄んだ声でそう告げると静かな歩みで庭に出る。
「申し訳ございません。慶光院様。嬉しくてつい」
お玉と呼ばれた少女が、肩をおとす。若き尼僧は、ふふと笑って
「良いのです。明るく素直な所がそなたの良い所なのですから」
と、お玉の手を優しく取った。
「慶光院様…」
みるみるうちにお玉の顔が明るくなる。
「そなたの言う通り見事に咲きましたね。菖蒲は紫も黄も色が濃くて美しい」
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