時の女権力者

8/10
前へ
/103ページ
次へ
「慶光院様!庭の菖蒲が見事に咲きました!こちらに来てごらん下さい」  明るくはしゃぐ声に、若き尼僧は微笑んだ。 「お玉、あまり騒ぐと周りにご迷惑がかかりますよ」  穏やかで澄んだ声でそう告げると静かな歩みで庭に出る。 「申し訳ございません。慶光院様。嬉しくてつい」  お玉と呼ばれた少女が、肩をおとす。若き尼僧は、ふふと笑って 「良いのです。明るく素直な所がそなたの良い所なのですから」  と、お玉の手を優しく取った。 「慶光院様…」  みるみるうちにお玉の顔が明るくなる。 「そなたの言う通り見事に咲きましたね。菖蒲は紫も黄も色が濃くて美しい」
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加