時の女権力者

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「慶光院様の方がお美しゅうございます。花よりもずっと」  見惚れながら、うっとりとした口調でお玉が言う。尼僧は、にっこりと華やかな笑みを浮かべた後、 「嬉しい事ですが、尼に美しさは必要ありません」  と静かに告げる。  伊勢の尼寺である慶光院の新院主となった彼女は、まだ16歳。  京の公家、二条家の末流である冷泉家の一族、六条宰相有純の息女であったがかねての志により出家した清廉たる美少女であった。
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