奪われた物の価値

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「うぅ」  兵士が目を覚ましそうになったので、もう一度兵士に触れ[ドレイン]と頭の中で唱えた。するとさっきのように力が漲るようなことはなく、なにも起こらない。信吾は、三度ほど[ドレイン]と唱えた。すると今度は、やけに体が軽く感じる。 「こっ、このやろう」  兵士は力なく言い、よろよろと立ち上がり殴りかかってきた! が、なんてことはない。ずいぶんと遅いパンチだ。軽くなった身体で難なく避けると、兵士が驚きの声を上げる。 「なっ! なんだ!? 身体が重い!?」 「そんなスピードじゃ、当たるわけないだろ!」 「っ! くそっ!! 覚えてろっ!!」  ありきたりな捨て台詞を吐き、兵士はギルドから出て行った。ふん!と鼻を鳴らし一息ついていると受付の女性に呼ばれた。 「大丈夫ですか? あれでも彼、この町で代々兵士長勤めてる貴族の息子ですよ? レベルもランクもそこそこにあったはずです。……信頼度は最低ですが」 「そうなんですか? でも、めちゃくちゃ弱かったですよ?」 「確かにさっきはそんな感じでしたが。たぶん本調子じゃなかったんだと思います。動きがやたら悪かったですし」  そういって心配そうな顔をしている。確かに本調子ではなかったのだろう。何せ、信吾がそうさせたようなのだから。しかし、当の信吾は未だスキルの使い方はよく分かっていない。 (何度か失敗したようだな。恐らくはじめに力を吸い取り、次に吸い取ったのは素早さといったところだろうか?)
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