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気がつくと知らない場所にいた。
(……ここは?)
古い木造の建物だ。体を起こし周りを見てみると、いくつかのベッドがある。かなり古いが病院のようだ。
「おっ。目が覚めたのか?」
声をかけてきたのは、背中に何かの模様の入った、薄いグレーのマントを身に着けた男だった。
「……はい。あの、ここは?」
「ここは、ランセルの治療院だ。お前、街のど真ん中で倒れてたんだ。覚えてるか?」
どうやら信吾は、街中で意識を失い。ここまで運ばれてきたらしい。しかし、信吾の記憶は会社で倒れたところでぷっつりと途絶えていた。
(……ランセル? 聞いたことがない。日本じゃないのか? その割には言葉が通じる)
考えながらも質問に答える。
「……いえ、覚えてません」
「そうか。とりあえず目が覚めたなら、今日はいいがなるべく早いとこ出てってくれ。金のない奴をいつまでも泊めてられんからな」
「金? 金なら持ってますよ」
お金はスーツのポケットに入っている財布の中にいくらか入っていたはずだった。
「ふん。お前が担ぎこまれてきたときには。ほぼ裸の状態だったが。あの兵士共め、服ごと盗んでいきやがったな」
慌てて自分の体を見ると、小汚い布切れを一枚身につけているだけだ。気を失っている間に身包みはがされてしまったようだ。
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