奪われた物の価値

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「クソっ! ふざけやがって! 誰のおかげでこの街が護られていると思ってんだ!」 「ホントですよ、隊長がいなかったらこんな街すぐに潰れちまうっていうのに」 「おい、魔道具取り上げられたんだ。あの服売った金は寄よこせよ」 「えぇー!? ……分かりましたよ、俺たちにも少しはくださいよ!」 「わーってるよ! 今からその金で一杯やるぞ!」  かなり離れていたが信吾には丸聞こえだ。やはりあいつらが盗んで行ったのに間違いないようだ。 (クソっ! 服は売られてしまったようだが金は必ず取り返してやる! こうなりゃ訴えてやるのが一番だな!)  そう考え医者のもとへ向かい、取り返してくれた腕時計について礼を告げる。 「さっきは、ありがとうございました」 「あん? あぁ、聞いてたのか。ま、あんだけでかい声出されたら当然か」 「それで、お金なんですけどちょっと待ってもらっていいですか?」 「ああ、いいよ。この魔道具売ってくれば相当な金額になるだろう」 「えっ? これはそんなに高いものじゃないんですが・・・」 「そんなことはない。俺の目が確かなら、かなりの価値があるものだよ。売れば300万は軽くいくだろ」 「えぇ!? そんなにしませんよ!?」 「いや、間違いないね。300万は堅い」  どうやらさっきの会話で言っていたのは男達を脅かすためではなく本心からだったようだ。 (そんな金額で売れるというなら、すぐに売ってこよう) 「何処に行ったら売れますか?」 「うん? その辺の店なら何処でも買い取ってくれるだろうよ」 「分かりました。ちょっと行ってきます」  信吾は渡された腕時計を手に、振り返り部屋を出ようとする。 「ちょっと待ってくれ。すまんが、一応念のためだこの腕輪を付けてくれ」  呼び止めた医者は、何かの文字が刻まれた腕輪を渡してきた。 「これは?」 「これは、契約の腕輪だ。お前がちゃんと戻って来て金お払うように契約を結ぶ」 「こんな腕輪で?」 「あぁ」  そういわれては仕方がない。腕輪をはめると腕輪が、すっと消えてしまった。 「あれっ!? 消えた!?」 「これで完了だ。もし約束を違えれば腕から先が無くなるから注意しろよ」 「えぇ!? マジですか!?」 「あぁ。じゃーもう行っていいよ」 「……じゃー行ってきます」
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