夢殿

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said:boy どうやって来たのか、何時から居たのか、ここはどこなのか、わからないまま僕はここにいた。 そして、どうやって、何時から来たのかわからない彼女も、そこにいた。 僕は知っている。 ここが、そこが『夢』の世界―夢殿―だということを。彼女が何度も何度も何度も繰り返し言うから。 『…ここは夢の中だよ。だからこそ、会えるんだよ。』 そういって、何度も何度も何度も泣くんだ。 どうして泣くの? どうしてそんなに悲しいの? 前にそう言ってみた。そうしたら 『…君に会えて泣いてるの。嬉し涙だよ。』 泣きながら笑って、そう言った。 僕は言葉がでなかった。 彼女は本当に嬉しそうに僕を見てから泣く。まるで、僕を見て何かを思い出したように、一瞬だけ動きを止めて泣き出すんだ。 僕はそれをどうしたらいいかわからず、隣に座って泣き止むのを待つ。そうして、いつのまにか彼女は居なくなるんだ、僕のとなりから。 ある時、それがすごく嫌で彼女の手を握ったら 『………暖かい』 そう言ってくれた。でも、やっぱりいつの間にか居なくなっている。つい先までいたはずなのに、姿が見えなくなっている。 ―――ねぇ、君は何処にいるの? そして、今日も君はここにやって来た。 でも、今日はいつもと様子が違った。 僕を見つける前から、すでに泣いていて、目をたくさん擦ったんだね、真っ赤になって少し腫れていた。 どうしたのって聞いたら、もうすぐ会えなくなるって、僕に会えなくなるって泣きながら言うんだ。 胸が張り裂けそうに痛んだ。 僕は居なくならないよ、ずっとここにいるよ、そう言って彼女の頭を撫でたら、またさらに泣き出した。今度は今まで抑えていた声を出して、大泣きだ。 『いやぁ!!もう、もぅ会えないよぉ!!』 僕の名前を叫んで、泣きわめく。 必死な姿に、僕は思わず抱き締めて君に伝えた。 「―――泣かないで…っ」 酷い痛みが喉に走って、かすれた声しか出せなかった。 でも――― end
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