17人が本棚に入れています
本棚に追加
said:girl
あの日。
あの、真っ赤な夕焼けを背景に私に笑いかけたあの日から、貴方は眠ってしまった。
一瞬の出来事だった。
目の前にいたはずの貴方は、大きな音と入れ違いに私の前からいなくなって、遠いところに横たわっていた。
“運転手が重労働のために引き起こした交通事故”
それに巻き込まれた貴方は、もう何年も何年も何年も眠っている。
「――今日も起きないの?」
私は何度も何度も貴方の病室に訪ねては、返ってこない返事を待ち続けていた。
そんなとき
『……君は…』
貴方の夢のなかに入っていた。
病室に入ってくる陽射しが暖かく、ウトウトしていたお昼。たぶん、貴方の手を握ったまま寝てしまったんだろう。
どうやってか知らないけど、私は貴方を見つけた。
会えてすごい嬉しくて、もしかしたら起きたら貴方も起きているんじゃないかって思ったの。そう、これは予知夢ではないのかな、なーんて淡い期待。
でも、実際は全然違った。
起きていなくて、眠り続ける貴方。
それでも、あなたに会える夢の中に私は何度もいった。
これが夢殿と呼ばれる世界なのはわかった。博識な貴方は、どこかの本から得た知識を、自慢げに話していたのを私は覚えていたから。
その夢殿で、私は自分に言い聞かせるために夢だよ、と何度も貴方に会うたびに言った。そのたびに、寝ているのに現実に戻されて私は泣いてしまう。
何故、どうして、と問う貴方は、自分も苦しそうな顔をしている。
―――ごめんなさい、すぐ笑うから、すぐ泣き止むから、だから少しだけ泣かせて。
心なかでそういっては、泣いた。
最初のコメントを投稿しよう!