ケース1

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むせ返る血液の匂い。瞬きしても目の裏で点滅する、赤。 (慣れなきゃだけど、これは流石に・・・) 壁に、地面に、ぶちまけられた血のシャワー。 「高木ぃ!足!足ぃ!」 課長からたしなめられる。 「あ!すみませ~ん!」 靴のカバーを忘れていたのだ。鑑識員がきびきびと動き回る。 邪魔にならないように、梨央は被害者の正面に回り込む。 吐き気を感じ、ポケットからハンカチを出そうとして、やめた。 (いけない、又、からかわれるわ・・・) 思い直し、傷口をのぞく。噴出した血に押し広げられた切創痕。 悲しいほど白く濡れている。 (首か・・・一撃かな・・・) 「本社、碓氷班だそうだ。気、抜くな」 遠藤主任が梨央に気合を送る。
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