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「そう」
ヘスティアさんの手が再び魔法石に触れ、液晶が切り替わる。
映し出された仕事の紹介状を私は見る。
「至急の依頼でね。今朝入ってきたばかり。依頼主はこの街の海上保安庁の沿岸警備部。今晩行われる武器摘発の時の協力と職員護衛。依頼金1人金貨15枚。しっかり保険適応よ。荒事ありだからクラスBのお仕事。貴女達にぴったりと思うわよ」
説明を聞きながら私は紹介状を見ていたが、あることに気付いた。
「これ勤務時間が書いてないけど?」
「依頼内容上、時間は極秘。依頼受けてくれたら教えるわ」
にっこりとした笑みで、薦めてくる。私は紹介状をみながら考える。
武器摘発ということは戦闘はあるだろう。しかし、基本的に行うのは警察の方。私達は後手に回っても大丈夫だろう。警察の皆様に恩を売れるし、今後荒事ありなハンター稼業では役にたつかもしれない。
何より保険適応で金貨15枚は大きい。これだけあれば一月は遊んで暮らせる。
「ブルーノと相談してから決めるわ。端末にこの紹介状、送って貰っていい?」
「募集人数若干名だから、早い者勝ちよ?」
言いながらも、ヘスティアさんは液晶を操作する。少しして、ポケットの端末が震えた。確認したら、先程の紹介状が端末に送られてきていた。
「昼までには結論を連絡するわ。ありがとう」
言いながら私は席を立つ。用事は済んだし、仕事の相談もブルーノとしなければならない。流石のあいつもいい加減起きているだろう。
「貴女達が来てもう一月は過ぎたわね。いい加減ここの専属ハンターにならない?」
前々からの誘いに私は苦笑する。街の専属ハンターになれば私達みたいな渡りのハンターより優先に仕事が受けられる事ができるだろう。街からの公的な仕事も受けられる。しかし。
「…1つの街にいるのは私達はキツイのよ」
ヘスティアさんが寂しそうな顔をする。この依頼だってヘスティアさんが個人的にとって置いてくれたのだろうが、他の人間がヘスティアさんの様に亜人種に好意的とは限らない。
「依頼、早めに連絡してね。駄目なら次に回さないといけないし」
私は頷いて、パーテーションから離れる。
「ありがとうございました」
かけられたヘスティアさんの声はどこか優しいものだった。
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