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私の言葉にヤンが頷き、ヘスティアさんが笑顔を浮かべる。
「では、どちらでも構いません。退院等の手続きを行ってもらっていいですか?」
「あ、はいじゃあ私が…」
出された書類を受けとると近くのサイドテーブルで必要事項を書いていたが、その動きを止めた。
「あの…ここの退院者の名前…どうしたらいいですか?」
言われて、初めて気がついたという風にフラムが少女を見る。
「そう言われれば…持ち主が現れるかもと名前を付けていませんでした」
ホムンクルスの特徴の一つが自分に名前を付けてくれた者を主人として付き従う事だ。他人に自分のホムンクルスを使われぬようにする処置らしいと聞いた事がある。この場合引き取るのが私達だから…私達が名前をつけないといけない。
「名前…名前かあ…」
名前、という単語に少女がぴくりと反応した。呼ばれるのを待つよう、緑の瞳をこちらに向けている。
…緑……か…。
「エメ。は?」
少女のエメラルドのような瞳と髪を見ていたら浮かんだ。我ながら単純だが、思い付かなかった。
「エメ、な。よろしくなエメ」
「エメ。貴方の名前よ」
ブルーノと私は交互に少女…いや、エメに話しかける。
「…名前…エメ…」
「喋った!」
初めて声を聞いた私とブルーノは思わず声を上げた。私達の反応にヘスティアさんが笑っている。
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