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…ざわっ……
…ん?
一瞬、ざわめきと自分に刺さる無数の視線を感じたが、呼ばれたので雑誌を置いて二番窓口へ行く。
「はあいレトさん。景気はどう?」
パーテーションで区切られた狭いスペース。テーブルの向こうに見知った顔がいた。
「ヘスティアさん。朝からご苦労様」
笑みを返せば、ヘスティアさんも営業スマイルを返してくれた。
ヘスティアさんはこの街に私とブルーノが来た時から私達に仕事などを紹介してくれている私達担当の女性職員だ。
ギルドの職員のせいか、亜人種に偏見無く接してくれ、私としてはとても話しやすい。
話しやす過ぎて今はすっかり互いに友達口調だが。
「相方さんは?」
「寝てるから置いてきた。殴ったって起きやしない」
「相変わらず朝弱いらしいね。んで本日のご用件は?」
「一昨日こっちの紹介で隣街まで運ぶ荷物の護衛したじゃない。それの終了証明」
そう言うとヘスティアさんは頷き、テーブルに備えつけられたノートサイズの液晶を起動させ、液晶に付いている魔法石を操作する。
ヘスティアさんが触れた透明な魔法石の中に浮かんだ魔方陣が淡く輝き、その中に封じられた魔力を解放する。
解放された魔力の流れが液晶に入り、ヘスティアさんの意志によって無数の処理が一瞬で次々行われていく。
魔法と機械技術の結晶である液晶は数秒でその画面に一つの文章を映し出した。
「はい。じゃあ一番下の空間に触って名前入力して。それで終わりだから」
私は指先で液晶に触れる。
指先で触れた箇所にインクの様な線が魔力によって液晶に浮かび、私はそのまま指先を動かして自分の名前を書いていく。
「はい。お疲れ様。直ぐに依頼金を口座に入金するからね」
液晶画面に私の名前が刻まれたのを確認したヘスティアさんは、更に私がよく分からない処理を魔法石と液晶を使いながら行っていく。
肩の荷が降りた気分がして、私は軽く溜め息を吐く。この依頼は内容にしては本当に大変だったのだ。
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