深大寺へ

2/7
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「いつか深大寺で結婚式を挙げられたらいいね」    幸せそうなカップルを見ながら、彼が笑顔でうなずきながら、言った言葉。彼が、私の元から去って行っても、私は、その言葉をずっと重く受け止め、引きずっていた。  スーパーで「深大寺そば」を見つけただけで、気分が塞ぎ、食欲がなくなった。  それでも深大寺にお参りしようと思ったのは、同じ場所へ行って、自分の気持ちに区切りをつけたかったからだ。    電車に乗って吉祥寺の駅に着くと、私はバス停を探す。バス停に並ぶと、人がまばらで、ちょっと安心する。行き交う人の流れを見送っていると、後ろから騒がしい笑い声が聞こえて、思わず振り返る。 「深大寺の縁結びの効き目すごいんだよ」 「お参りすると、結婚できるって」    ガイドブックを抱えた大学生風の女の子たち。私や周りの人の視線も気にしない様子で、「縁結びそば食べなきゃ」などと騒ぎ、かなり浮いている。私も少し前まではあんな感じだったのだろうか。  
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!