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先程まで怒髪天を突くといった勢いで怒り狂っていた女性は思いの外大人しく退散した。
烏丸のワケのわからない言い分に気圧されたのか、あるいは彼を相当の狂人だと思ったのかもしれない。
これを不幸中の幸いというのかはわからないが、まぁなんにせよもう二度とこの店に来ることはないだろうな、と椿はうな垂れた。また貴重な客を一人逃したのだ。
「何だ、来ていたのか」
その一言を聞くや戸口の横で頭を垂れていた椿は素早く烏丸へと詰め寄った。
「何だ、じゃありませんよ!また貴重なお客さんが怒って帰っちゃったじゃないですか!」
「あの肥えた年増は俺の店で出している品に対して理解がなかった。猫に小判、豚に骨董品とはよく言ったものだ」
後半のは聞いたことねぇよ、と内心舌打ち。
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