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怪談劇
怪談劇が流行しだしたのはエログロナンセンスの時代、いわば化政期頃からで、鶴屋南北がその創成者。芝居に幽霊が登場、そして仁術芝居のはじまり妖術師が主役となる。
南北劇のテーマは、悪、残虐、怪奇の賛美。
近世演劇の古今東西を通じ、南北の狂言は群を抜き面白い。世界に反逆するが如くに幽霊が登場し、近親相姦や殺人、非人など下層町人の生きざまをリアルに写し出し、化政時代劇ともいわれる生世話を創り出した。
それに早替わりや大げさな仕掛けをふんだんに取り入れて、見物衆を驚かした。早替わりの鮮やかさに役者が妖術を使ったんじゃないかと話題になったほど。
南北の狂言をより面白く見せたのも個性的な役者がいたからで、得意な役どころを見事に演じ、名優と呼ばれた人がたくさんいる。
なかでも尾上菊五郎は幽霊役者の元祖ともいわれ、養子の三代目尾上菊五郎は四谷怪談のお岩を演じて大当たり、幽霊役者の異名をとる。ニヒルな伊右衛門役は七代目市川団十郎。極悪人を演じた五代目松本幸四郎。悪婆に扮する五代目岩井半四郎など彼らは南北劇に欠かせない俳優たちだ。
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