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―-そうだ、死んでやろう。
そう、考え始めたのはいつの事だっただろうか?
僕は今、一つの橋の上にいる。それほど大きな橋ではない。だが、入水(ジュスイ)する分には十分であろう。
そして、いざ飛び下りようと柵に手を掛けた所で、僕は一人の少女の声を聞いた。
いつもなら、聞き逃していただろう声であったが、死を覚悟して緊張していたのか、その声はいやにはっきりと聞こえた。
「『恋をしたのだ。そんなことは、全くはじめてであった。』」
その台詞は、自殺をしようとする人を止めようと言うには、少しばかりか殆ど説得力が無いものであった。
「君は、自殺を考えてるのかい?」
僕がその方を見ると、少女はそんなことを言ったのだ。
「今の言葉が、自殺を止めようとして言ったことなら、アンタはなかなかに可笑しな人だな。死ぬ前に恋だのどうのと説くとは。」
すると、彼女は少し不思議な顔でこちらを見た。
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