2人が本棚に入れています
本棚に追加
その後、僕は「興が冷めた」と言って、その場を後にした。その時、彼女、大友は少し微笑んでいる様にも見えた。
どうやら、僕は大友の狙い通り自殺を止められたようだ。だが、自殺は諦めてはいない。
家に帰り、自室に入ると僕は大友に渡された文庫本を開いていた。
『ダス・ゲマイネ』
冒頭は、大友が僕と出会ったときに言った言葉と同じであった。
始めは、佐野次郎と呼ばれる25才の青年が恋をし、そしてフラれる一節から始まる。そして、それを励ましに、馬場と呼ばれる人物が現れ、その馬場との出会いから物語は始まる。
そしてある日、佐野次郎と馬場は幻燈と言う場所で佐野次郎が惚れた女性の事で喧嘩をしてしまう。その後、佐野次郎のもとへ馬場から手紙が届く。
「―-君が死ねば、私への嫌がらせか……と自惚れてしまう。ね」
大友はどうやら、さっきの会話のいくつかをこの小説から引用していたようだ。
そして、佐野次郎へ届いた手紙には、一緒に雑誌を作らないか? と、誘いの一文があった。
佐野次郎は、その手紙を読んで馬場と雑誌を作ることを決意し、馬場と一緒に仲間を集める。挿し絵を担当する佐竹。小説を担当する太宰。
最初のコメントを投稿しよう!