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お母さんに聞いても『ごめんね』しか言わないし、お兄ちゃんからは一通のメモが残されてあったけど…… 『絶対帰ってくるから待ってろ』 ただ、それだけだった。 帰ってくる保証なんて、どこにもない。 なんでいなくなってしまったのかの理由……なんてものは、もう、分かりきったようなものだけれど……   これからどうやって生きていけばいいの?―― 最初に思ったのが、これだった。 病気が発覚して、お父さんと、特にお母さんが私に同情ばかりしていた。 反論とか、何も言えなくて…… そこで助けてくれたのが、お兄ちゃんだった。 『杏奈には俺がいるから』 年が2つしか変わらない兄が、とても頼もしく見えて…… あの言葉が素直に嬉しくて…… あの頃の私は、本当にお兄ちゃんがいたから学校にもちょっとは通えたようなものだった。 そして…… なによりも、大好きだった。   だからこそ―― 「お母さん……どうして?お兄ちゃん、何か言ってた?」 「……私にも、よくわからないの」   ねぇ、どうして?――
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