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「大槻くん」 「はい? ……秀也さんですか」 「一服中、すまないね。隣、いいかな?」 「どうぞ」 「……久々に来た学園はどうかな?」 「いやぁ、だいぶ変わりましたね。学園全体の改装工事も終わって綺麗になったんじゃないですか? 隆助達がまだ在校生だった時はスラムって感じでしたけど。今は整然としてますね。ますます異国って感じです。日本の文化圏内でここまでの様式を出すのは苦労したんじゃないですか?」 「ああ。それは一部区域に和を取り入れる事で解決したよ。武芸館周辺は三大庭園をモチーフにデザインしてね。他にも自然公園は日本の植物を植えて立派に仕上げた」 「もう観光地ですよね」 「創立者の趣向だからね。学園の教員はどうしても実現したかったんだよ」 「まあ、質素よか売りがあっていいですよね。学園祭で保護者父兄を招くにしても、見所があれば足も軽くなるでしょうし」 「何よりも生徒達の活気にも繋がっているよ」 「ははっ、そりゃあいい。客が集まれば生徒らも半端じゃ気が収まらない。大いに見栄を張れるってわけだ」 「ふふっ」 「どうしました?」 「いや、学園祭の事しか言ってないと思ってね」 「……いやいや、ちゃんと他の事も含んで学園祭の話をしてますからね? 学園祭が賑わう学校は人気じゃないですか」 「そういう事にしておこうか」 「秀也さん」 「わかっているよ。大槻くんの言う通り、学園祭が賑わえば自然とここを受ける受験生も確かに増える。でも、それは一つの要素だ」 「偏差値、ですか? 俺にはよくわかりませんが。授業をサボってきた俺が言うのもあれですが、この学園の授業はしっかりしていると思いますよ?」 「いいや、それは限られた授業だけだよ。一つ一つ、教科を挙げていけば不充分な点はいくつもある。ここは一応、専門分野の学校だからね」 「う~ん……やっぱり一般教科は緩くなってしまう、って事ですか?」 「学年が上がっていけばそうなっていく。基礎として一般教養は初等部、中等部でしっかりとするが、それでも倫理に関する授業を組み込んでいる。高等部にもなれば、どうしても専門色が濃くなってしまうね」 「はぁ~……ノラでやってきた俺には窮屈に感じますね」
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