一章/絶望、希望

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…死んだか?いや、俺は死ねたのか? いや、考えられるってことは…俺は… 「韓野さん、わかりますか?病院ですよ?」 看護師の声に、俺は目を覚ました。 真っ白な天井、窓の光、心地良いベッド。 天国のようだが、俺には地獄に返ってきたような気がした。 「大事に至らなくてよかったですね。頭の損傷と左の足首の骨折だけですみましたよ。命に別状はないので、すぐ退院できますからね。」 「はぁ…、どうも。」 そういうと、看護師は俺の部屋から退室し、沈黙が訪れた。 途端に悔しさがにじみ、痛むほどに握り拳をベッドにたたき落とした。 「くそっ…。また俺は…独りで…地獄を見ろってのかよ…!」 家には、いや、日本には誰もいない。 俺は、この腐った日本にとりのこされた。 晴天の空、光が射し込む部屋のなかで 俺はただ、声を殺して泣くしかなかった。
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