一章/絶望、希望

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午後九時ちょっとすぎ。俺は自宅で独り、パソコンの前に座っていた。 家には誰も帰ってこない。 父は海外に転勤、母は違う男とどこかへ消えた。兄姉は俺を捨てて何処かへ引っ越した。 金は父から送られてくる。しかしあまり使わない。俺独りじゃ、大金すぎる。 だれも、俺を見てくれていないのだ。 [現実では出来ないことが出来るんだ。] ふと、修太郎の言葉が頭をよぎる。 少しだけ、と思いヘッドフォンをパソコンにさした。まだ頭には着けていない。 すると、画面に注意事項らしき文らしきものが出てきた。 *独りになれる環境でプレイをしてください *プレイ中にヘッドフォンを抜かないでください。身の危険につながります *立ってゲームを始めないでください。 それ以外にもいろいろ書いてあるが、関係のないものだった。 「ここなら…俺は変われるのか?」 ふと呟いて、ヘッドフォンを付ける。 そして、ゲームのスタート画面まで進めると、息をのみ、スタートボタンをクリックする。 「っ!?」 途端に目の前がグラリとゆがむ。ヘッドフォンについているフィルターが起動し、目の前を眩ませる。 (コレが、ゲームの中に入るって…ことなの…か…?) 次第に意識が遠くなり、椅子にもたれ掛かった。 気絶というより眠気におそわれる感じだろうか。そのまま目を瞑り、ヘッドフォンに意識がとんでいった。
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