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ゲートを潜ると、壮大な世界が広がっていた。
アンティーク調の町、シンボルと言える噴水。笑みを浮かべる人々を、暖かな日差しが包み込む。
俺が望むような世界が、目の前に広がっていた。
(ここが、サイバーホープの世界。)
辺りを見渡すと、ある人の体の一部に紋章のようなものが刻まれていた。どうやらユーザーの証のようで、俺の左手の甲に刻まれている。
「キャー、泥棒!」
ふと後ろから叫び声が聞こえた。振り返ると、こちらに走る男の姿があり、不似合いな鞄を抱えていた。
(この世界にも、そんなのが…。)
現実の世界を思い出させられ、道を塞ぐ様に男の行く手を阻んだ。
「…待て、それ置いてけ。」
「ざけんな!新入りのクセして!」
そう威張り散らすと、腰の辺りからナイフを取り出した。
紋章があるところを見るとユーザーのようで、俺のステータスから始めてだと悟ったようだ。
男のレベルは29。天地の差だが、怖くはなかった。俺は腰から先ほどの剣を取り出し、刃先を相手に向けた。
「はっ、そんなレベルで何が出来るんだよ?」
「さぁ…、何だろうな?」
鼻で笑う男を挑発すると、男は叫びながら突進してきた。俺はまだ動かない。なぜか分からないが、相手を動きが遅く見えた。俺は剣を地面に突き立て、勢いよくジャンプした。
「なっ…!!」
すると、想像以上に高く飛び、軽々と相手の後ろについた。今のレベルではあり得ないのか、相手も驚いていた。
その隙をつき、相手に向かい剣を振る。刃は相手にあたり、後ろへと吹き飛んだ。
(こんなことも出来るのか…。)
驚愕していると、倒れ込んでいた男が立ち上がったが、男の肩を後ろの男がたたいた。
「あぁ!?邪魔する…」
言いきる前に男は息をのみ、腰が抜けるようにしゃがみ込んだ。行く手を阻むように、その男は大剣を相手の後ろの地に刺し、大勢の男達に囲まれた。
「盗人はルール違反じゃね?しかも、この町でやるとは…素人だなぁ?」
「ゆ、許してください…グレンさん」
「許す?今更許おせぇよ。」
グレンと名乗る男は刺していた大剣を男のズボンに刃をかけ、囲んでいた男達の方に投げ渡す。
「連れてけ。目障りだ。それから…」
言葉を切ると、グレンは俺の方に目を向けた。
「お前、ちょっとこい。」
「お、俺か?」
「初めてだろ?教えてやるよ。」
そう言うと俺の手を握り、何処かへと向かった。
この男を信じてはいないが、抵抗しようと思わなかった。
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