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『じゃあまた明日ねメープル』
『いつもありがとうね~』
お店の扉からちょっと出て手をぱたぱたと振る。笑顔も振りまくメープル。
正直可愛いと思う。性格がよければなお。
お店をあとにしていつもの帰り道を歩いて行く。パンを食べながら。
『えっ…と…』
迷った。何故?
パンに夢中になっていたとしてもいつもの道を間違えるはずが無い。
しかしあるべきいつもの道はなく。ただそこには雑貨屋さんがあるだけだった。看板も灯りも無い雑貨屋。
まぁ…聞けば分かるかな
太陽が傾きかけ。月も登る時間。少しの好奇心と緊張。
雑貨屋の扉を開ける。
『おや?おやおや珍しい。道にでも迷われましたかなお嬢さん』
『……あ、えと。ここは何区でしょうか?』
一言で言えば道化師。初対面の人には失礼だけど。帽子のせいだろうか。
『イリーアの東。タニア区ですよ。』
男は笑顔で答えた。それが本当ならば家までそう遠くは無い。
ただ道を間違えただけなのだろう。
『そうでしたか。教えて頂きありがとうございます』
『いやいや、人は助け合って生きて行くものですよ』
笑顔を崩さないままこちらを見つめる男に会釈をしてあとにしようとした。
その足を止めたのは男では無く。扉の横で椅子に座る人形。
少しずれた日常。まだ変わらない平和。
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