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『経緯(いきさつ)は知りやせんが、死んでねぇ人間(カタギ)を担いで出歩くなんざァ、亡霊の身分でずいぶんとスジの通らねェマネしやがりますね』
風来坊はそう言うと、六角棒を構える。
「肝が据わってンな。だが弁(わきま)えッてのを知らねェようだ」
『どんなヤロウでも、あっしはスジの通らねぇやつは見逃せねぇ性質(タチ)なんでござんす。その娘さんを離してもらいやしょう』
「いまはテメェの相手をしてるヒマはねぇ。今度ゆっくり遊んでやるよ」
『あまりあっしを見くびらねぇ方が身のためでやすよ』
「ほう」
アカムシは、指先から炎弾を連射した。
風来坊は、的確にその攻撃を棒で振り払う。
一拍置く間もなく炎の連射がつづくが、すべてを棒で払いのけた。
跳脚する風来坊。回転する金剛棒。縦一文字に振り下ろされた。
アカムシは、それを軽々と避けた。
風来坊の振るう棒は、地面にめり込んでいた。
『水神・罔象女(すいじんみずはめ)。
雨神・闇?(うじんくらおかみ)。
風神・風伯翁(ふうじんふうはくおう)。
御助力以て灑掃(さいそう)致せ』
――――水鱗(すいりん)ッ。
掌から水が湧き、どんどん増大してゆく。
平面上になった水塊(すいかい)を、アカムシめがけ投げ付けた。
フリスビーのように一直線に飛ぶ。
アカムシは、片手で水塊を薙(な)いだ。
分散された水の破片。
破片はアカムシのからだをピッとかすめる。
「いてッ」
モノは水だが、その切っ先は鋭利な凶器。
破片のひとつが、静季を担ぐ腕をかすめ、反射的に落としてしまった。
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