第19話 【自殺の真相】

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    『経緯(いきさつ)は知りやせんが、死んでねぇ人間(カタギ)を担いで出歩くなんざァ、亡霊の身分でずいぶんとスジの通らねェマネしやがりますね』 風来坊はそう言うと、六角棒を構える。 「肝が据わってンな。だが弁(わきま)えッてのを知らねェようだ」 『どんなヤロウでも、あっしはスジの通らねぇやつは見逃せねぇ性質(タチ)なんでござんす。その娘さんを離してもらいやしょう』 「いまはテメェの相手をしてるヒマはねぇ。今度ゆっくり遊んでやるよ」 『あまりあっしを見くびらねぇ方が身のためでやすよ』 「ほう」 アカムシは、指先から炎弾を連射した。 風来坊は、的確にその攻撃を棒で振り払う。 一拍置く間もなく炎の連射がつづくが、すべてを棒で払いのけた。 跳脚する風来坊。回転する金剛棒。縦一文字に振り下ろされた。 アカムシは、それを軽々と避けた。 風来坊の振るう棒は、地面にめり込んでいた。 『水神・罔象女(すいじんみずはめ)。 雨神・闇?(うじんくらおかみ)。 風神・風伯翁(ふうじんふうはくおう)。 御助力以て灑掃(さいそう)致せ』 ――――水鱗(すいりん)ッ。 掌から水が湧き、どんどん増大してゆく。 平面上になった水塊(すいかい)を、アカムシめがけ投げ付けた。 フリスビーのように一直線に飛ぶ。 アカムシは、片手で水塊を薙(な)いだ。 分散された水の破片。 破片はアカムシのからだをピッとかすめる。 「いてッ」 モノは水だが、その切っ先は鋭利な凶器。 破片のひとつが、静季を担ぐ腕をかすめ、反射的に落としてしまった。  
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