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◆ ◆ ◆
ひでぇ目覚めだ。
天井の木目。湿気(しけ)た床。
まちがいない。おれの家の床板だ。
それにしても不愉快なのは。
―――湿布(しっぷ)のにおい。
あらためて言葉にしてみる。
「ひでぇ目覚めだ」
「ん?起きたか月弥」
「気ィ失ってからジジイの顔おがむねんてよ」
「相変わらず非道(ヒド)いいわれようじゃ」
「ジジイ、よくわかったな」
「わしが見つけたんじゃねェ」
「じゃあだれが」
ボクです―――と横から貞吉があらわれた。
「オメェ、あんとき」
ともに工場にいたはず。
「逃げたんです。とっさに」
「怖くてか?」
はい―――貞吉はアタマを掻いた。
「それもありますが。一瞬にして、これは乾坤堂のピンチだと悟ったのです。それで―――与作さんの元へ助けを呼びに」
むくりと、起き上がれなかった。
ヤケドで骨までひしめいている。
全身を包帯で巻かれている。どうりで息苦しいはずだ。
横目をみやると、北條と羅巌もともに横たわっていた。
ふたりともひどいヤケドだ。
「気を失っているだけで、命に別状はありませんでした」
しかし北條は、腹をえぐられた―――。
「間一髪、結界でおのれを護ったんじゃろう。それほど深く食い込んではなかった。おかげで内臓を焼かれずに済んだわい」
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