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「ところで―――静季さんは?」
貞吉の問いかけに、月弥は瞠目した。
「え――――」
「あァ、イテ―」
つづいて北條と羅巌も目覚めた。
「治療してくれたのか、すまぬな」
「ありがとう」
羅巌の純粋な言葉に、貞吉はすこし照れた。
逃げたクセに―――と内心おもう与作。
「月弥、おまえも無事だったか」
となりの月弥に話しかける北條。
しかし、どうも様子がおかしい。
月弥のからだは、小刻みに震えている。
「どうした、月弥?」
わかんねェのかよ、と月弥はつぶやく。
瞳が、前髪に隠れた。
北條は目を見開く。
「まさか――――」
「静季が―――アカムシにさらわれた」
―――ッ!!
たしかに、ここには月弥と北條と羅巌の三人しかいない。
空気が硬直し、天井を飛び交う虫の羽音が響く。
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