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鳶色の瞳と髪。すらっとした体型の男────、
つまり俺は、靴の爪先部分に目を落としながら、学校から帰宅していた。
もっと細かくいえば、背後から何やら揉めている声が聞こえるがガン無視して、
通学路であるいつもの木々に囲まれた小道を歩いていた。
「ん?」
木漏れ日が揺れる薄暗い小道の中間。
何かの異変に気づいた俺はふと、立ち止まって足下をじっと見据えた。
「……ふ───…くぁーーー」
大きな欠伸を一つして、目を擦ってみる。
……やはり現状は何も変わらない。
見えない何かに阻まれて、前方が全く見えねえ。
例えるなら、写真に穴が開いている様な感じ。
その見えない何かは、黒っぽい点らしきものだった。
それが確認出来た俺は、普通に点を避けてスルーすると、そのまま暫く歩いた。
そして振り返る。
背後の揉めている二人は、俺の居る小道を行こうとせず、角を曲がろうとしていた。
そこで傍にある大木を思い切り蹴った。
急に大きく音を立てて倒れた大木に、二人は言い争いをやめこちらを見やる。
だがその前に、俺は木の影に隠れていた。
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