第一章 ネズミの怒り

4/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「あちらです」  カスケンがそういって指差したところは門の前で、チュー太郎はその前に座って国王が来るのを待っている様子だった。イステム四世はカスケンにお礼をいうと、チュー太郎がいる場所へ駆け寄った。 「わしに用というのは、そなたのことか」  イステム四世は、チュー太郎にそう訊ねた。するとチュー太郎は、スッと立ち、国王の前に立ってお辞儀をした。 「国王にお願いがあって来ました。どうか、私の願いを聞いていただけませんか?」 「よかろう。カスケン、さがってよろしい」  国王はカスケンを追いやると、チュー太郎を自分の部屋へと案内した。外で聞くのは、しんどいと思ったからだ。それはカスケンも承知のこと。  チュー太郎は、城に入れることをたいそう喜んだ。今まで、自分の家以外で行ったことはないという。それを聞いて、イステム四世はたいそう驚いただろう。 「して、そなたは、何をお願いしにここに参られたのか?」  自分の部屋に通した後、国王はチュー太郎に訊ねた。するとチュー太郎は、名刺を国王に渡した。 「根津チュー太郎、これが私の名前です」  チュー太郎はそういって、頭を下げた。国王はその名前を聞いた瞬間、たいそう驚かれた。一週間前、自分宛に届いた手紙の中に、根津チュー太郎という名前があったのを思い出したからだ。冗談だと思ったらしいのだけど、チュー太郎を見ていると、本当のように思えた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!