第一章 ネズミの怒り

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「ところで国王様、この前出した手紙、拝見なされたでしょうか?」 「確か、猫に困っていると、手紙に書いていたな。そのことで話がしたいと」 「さようでございます」  チュー、太郎は、カバンから画用紙を出し、それをイステム四世の元へ持って行った。イステム四世は、それを受け取ると、手に取ってじっと見てみた。そこには、ネズミが猫に追いやられているところが描かれている。 「知り合いの画家に頼んで描いてもらったものです。お気に召したでしょうか?」  国王はそれを見て、たいそうビックリなされたそうだ。ネズミと猫をこのように描けるものと知り合いだったとは。そういう問題ではなかった。ネズミのお願いを聞かなければいけないのだ。 「して、このことが、ネズミとどう関係しているのだ?」 「おおありでございます。私たちネズミは、それで困っているのです。猫は私たちの姿を見つけると、追いかけ回してくるのです。おかげで私たちは、外出できずに困っています。どうか猫に、私たちを追い回すのは止めてくださいと申してください」  チュー太郎はそういうと、イステム四世に頭を下げた。イステム四世は、その話を聞いて、ますます驚愕したそうな。猫がネズミを追いかけ回しているという話は、童話の中だけだと思っていたイステム四世は、この手紙を読んだ瞬間、馬鹿馬鹿しくて、思わず破り捨ててしまったのだ。猫がネズミを追いかけるわけないと。 「そなたの言っていることはわからんでもない。私にどうすればいいと」 「猫にネズミ追いかけ回し禁止令を出すのです」
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