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第1話 残酷な辞令
「どういうことですか?」
自分の口からこんなにも低い声が出るなんて知らなかった。
言いようのない屈辱に肩口がふるふると震えだす。
これは何かの間違いだって今すぐ否定してほしい。
目の前の男を睨み付けると、彼は肩を竦めて座っている机をこつこつと指で叩いた。
「どうもこうもない。降格ってこと」
「だから、どうして降格なんですか? わたし、何かミスしました?」
思わず声を荒げてしまう。
ここは第三会議室。一般会議室の中では一番広い。
まもなく終業時間になろうという頃、部長であるこの男、安藤紘矢(あんどう こうや)に呼び出された。
安藤は三十五歳。
アーモンド形の目と、くっきりとした輪郭を描く唇が印象的な、白肌の美麗な男。
身のこなしが上品だから一見優しそうだけれど、本当のところはずる賢くて抜け目がない。
散々遊びまくっていたくせに、いつの間にか専務の娘を手玉にとって、ステップアップしていった。
重役候補でいずれは社長との呼び声も高い、わたしの元指導員。
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