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「俺が仕込んだお前がミスなんてするわけないだろ」
仕込んだって……。
こんな時だというのに、安藤の長い指がわたしの素肌の上を動くさまを思い出して、どきんと心臓が痛んだ。
「だったら、どうして……」
「引き抜き。なんだか優秀なのを引き抜いてきたらしいよ。で、お前のポストを空けて、そいつを入れるって」
「はぁ!?」
引き抜きって何それ!
「引き抜かれるぐらいの人なら、もっと上のポジションを渡せばいいでしょ。部長のポストとか!」
安藤を睨み付けると、「やめてくれよ~」なんてふざけた声を出している。
だって、普通に考えてそうでしょう?
わたしの職位はマーケティング部営業二課主任。役職としては一番下っぱ。
それだって、やっとやっと去年、二十六歳の時に手に入れた大切な椅子。
男尊女卑が未だ根強いこの会社で、女性としては異例の昇進と言われた。
この一年、数々のいやがらせだって笑顔でかわして、仕事一筋でがんばってきたというのに、今になって、そんな……。
怒りを通り越して、呆けてしまいそう。頭からぷしゅーっと煙が出ていると思うわ。
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