第1話 残酷な辞令

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「……わたし、転職します」  入社して丸五年。  主任の肩書がある内に転職しよう。  名の知れた総合商社だもん、贅沢さえ言わなければどこかしら拾ってくれるでしょう。 「いいけど。来週頭に、そいつ来るからな」 「来週頭っ!?」 「月曜日から出勤予定。辞令もその時下りるから」 「ちょっと!」  今日は週末金曜日。終業時間まであと三十分。  それまでに退職しろっていうの? 「おっと、あと三十分。退職願なら、今、受け付けるぞ」  安藤はわざとらしく腕時計を眺めて声を上げた。
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