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第3話 彼氏
「……んんっ」
頭がガンガンする。
土曜日の朝、朝と呼ぶにはもう日が高すぎるかもしれない。
枕元の時計を確認すると、ちょうど十二時を回ったところだった。
喉の渇きを覚えてのそのそとベッドを這い出る。
重い体を引きずる様にして寝室を出てリビングの扉を開けた。
緑の布ソファの上に大きな肢体が転がっている。
終電を当たり前に逃した呉がリビングに泊まっていくのはいつものこと。
間違いが起きたことは一度もない。
キッチンに入って、冷蔵庫から冷たい水を取り出す。
二リットルのペットボトル容器に直接口をつけてごくごくと飲んだ。
水が全身に沁み渡る。
「はぁっ、おいしい」
息をついたところで、呉が寝返りを打つ音がした。
「俺にも水」
ソファの背もたれ越しでこちらは見えていないはずなのに、音でわかったらしい。
グラスを出して水を注ぎ、それをローテーブルへと運んだ。
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