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第4話 今のままで
「柴(しば)?」
ドアの隙間から呉が遠慮がちに顔を覗かせた。
「呉……」
顔を覆っていた右手をどけて、目線だけを扉に向ける。
「入っていいか?」
「……うん」
わたしの返事を確認すると、呉は入口に頭をぶつけないよう気を付けて入ってきた。
改めて背が高いのだなぁと思う。
呉が入ってくると六畳の寝室が随分狭く感じる。
彼はベッドに腰掛けてわたしを見下ろした。
「大丈夫か?」
「大丈夫かって……特攻させたのはあんたでしょ」
「それで?」
しれっとした顔をして、悪びれもせずに聞いてくる。
わたしの周りの男って鬼ばっか。
そういうわたしもガツガツ系だから、結局みんな同じ穴のムジナってやつなのだろう。
光のような癒し系の存在は、わたしの人生の中でレアだったのかも。
あまり自己主張せず、いつもこちらを思いやってくれる人だった。
そういうところをバカにしていたわけじゃないけれど、大切にはしていなかったかもしれない。
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