白い猫から続く道ー2

5/5
前へ
/130ページ
次へ
「なんで体を売ろうとしたんだ。」    食事が終盤に差し掛かった頃、智弘が口を開いた。  少しの無言が続き少女がゆっくりと口を開いた。 「お金が、どうしてもお金が必要だったんです。」 「普通のバイトじゃダメなのか。」 「バイトはしています。それでもまだ必要なんです。」  絶望的な表情をしていたが、少女の言葉からは本当に金が必要だということが分かった。 「なんで必要なんだ。」 「言えません。」 「いくら必要なんだ。」 「言えません。」 「親に頼むとかは出来ないのか。」 「親はいません。育ててくれた伯父夫婦がいますが、それはできません。」  ドラマや漫画では良くある環境だが実際にそういった環境を聞き智弘は言葉が詰まった。 「いくらで体を売るつもりだったんだ。」 「どれくらいが普通なのか分かりませんが、3万円ぐらいでしょうか。」  少女は俯きながら答えた。 「俺も相場は分からないが学生と考えるとそれぐらいなのかな。」  食事を終え、掛けてあったスーツに向かいながら答えた。  ポケットから財布を取り出し中身を確認し数枚取り出した。 「メシを作ってくれたお礼だ。」  少女は顔をあげ目の前に出されたお金と智弘の顔を見比べた。 「食事を作っただけでそんなに貰えません。」 「いいんだ。どうせ一人暮らしで寂し、女子高校生とメシを食うという貴重な経験をさせてもらったしな。」 「でもっ、そんなに。やっぱり体で。」  申し訳なそうな表情のままゆっくりと立ち上がり近づいてきた。 「やめとけよ。お前にはそういうの向いてないんじゃないか。」  少女の手に金を握らせ食器を片づけ出した。 「でもっ。」 「いいから。それをやるからもう帰れっ。」  なおも食い下がろうとする少女に少し強めに言い放った。 「っ、分かりました。」  少女はそれだけを言い足早に部屋から出て行った。  少女が出て行ったことを確認しソファーに腰掛けた。 「ふぅ、あんなことあるんだな。」  今日おこったことを考えながら芸人が熱湯に落とされる番組をぼんやりと眺めていた。  ちょっとカッコつけすぎたかなと思い。気がつくと少し笑っていた。  明日は休みだし月曜日にでも今日会ったことを後輩にでも話してやるかと思いながら冷蔵庫の中にあったビールを取り出した。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加