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ステッキを調べる少年の横で、少女はノートに向かってシャーペンを構えた。
「んーと、次は衣装ですねっ。 変身方法はどうしましょう。」
「あ"?」
少年はステッキを少女の喉元に突きつける。 少女は両手を肩の高さに上げ、ほざく。
「あははー、ファンシーですねー。」
「ふざけんなよアホ。 ………本物である以上、下手な事書いたらお前死ぬぞ。」
今の所、この世に存在しない物質で形作られたステッキが1本出来上がっただけなのだから、やめるなら今の内だろう。 このちょっと不可思議な物体は、可能な限り細かく砕いて、近くのどぶ川にでも撒いてしまえばお終いだ。
しかし、このまま調子付いて(衣装ならまだしも)魔法の設定や敵の設定などを書き始めたりしたら、彼女は戦いの運命に身を投じる事になる。
少年の心を知ってか知らずか、少女はノートから目を離さずに訊ねた。
「心配してくれてるんですか?」
「んな……」
少年が図星を突かれ、思わず半歩引いた瞬間。
「てい。」
「ちょ、何かいt」
少年の声がふつりと切れる。 口だけがパクパクと動き、声が出ていない。 驚きで怯んだ隙に、少女は続けて何かを書いた。
マズい、このまま設定を書き込む気だ!
ステッキで少女の頭を殴ろうとすると、彼女は少年に向き直り、振り下ろされるステッキの柄を掴んだ。
「ふふふ。このステッキの持ち主は、あたしですよ!!」
シンボルの月が光る。 いや、ステッキ自体が光って――
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