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とある昼下がりの出来事だった。
教室の窓辺。 麗らかな春の日差しに包まれて、その少女は船を漕いでいた。 教師の説明を子守歌に、机の上で組んだ腕の中へと沈んでゆく。
――ああ、ダメ。 もうムリ。
限界を感じた少女は思い切って目を閉じた。 即座に、深く沈み込むような感覚と共に、周りの音が消える。 至福の時。
しかし、その心地良さは1分と保たなかった。
「おい。」
閉ざされた筈の聴覚が、一瞬で復活する。 後ろの席から発せられた声。 それは少女が最も聞き慣れていた。
このまま反応を示さなければ、どうなるのか検討はつく。 しかし眠いものは眠い。 そろそろやられる頃だが、目が開かない。
それと、その時にとられる行動を楽しみにしているのも、また事実。
やれやれ、と言いたそうな空気が背後で漂い、ゆっくりと、手が伸びる。 その手にはノートがしっかりと持たれていて――
スパーーン!!と言う軽くも、クリティカルな音が教室中に響き渡った。 少女と同じようにうつらうつらしていた連中もその音で目を覚ます。
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