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うう、と唸って、少女は訴える。
「痛いです……。」
「寝るな。」
即答され、少女はただ自分の頭を撫でた。
彼にとって、これは軽く肩を叩いた程度の事だろう。 何せ、本気で殴ろうと思ったなら、ためらいなく辞書の背表紙を頭に振り下ろしてくるような性格である。
薄っぺらい大学ノートの、それも面で叩いてきたと言う事は、彼の機嫌はかなり良いようだ。
だがそれもいつまで保つか分からない。 彼の机にそれとなく置かれた英和辞典の背表紙が火を吹く前に、と少女は背筋を伸ばして黒板に向かった。
でも、暇だなぁ。
少女の瞼は再び、重く下がって来た。 このまま頭を下げれば次は良くて教科書の面、悪くて英和辞典の角だろう。
彼に構って貰えると言うのは嬉しいが、流石に延髄に鈍器(しかも角)を叩き込まれたら死にかねない。 少女はぐっと胸を張って、立ち直った。
しかし、暇なのに変わりないから、と窓の外を見る。 盛りを過ぎ、緑が目立つようになった桜を眺めて、
ふと、何かが落ちた気がした。
目が、落ちたであろう何かの着地予想地点にいく。
初々しい芝の上にピンク色のノートらしき物が落ちている。
授業は残り10分程。 彼女はジッとそのノートを見つめ続けた。
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