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「えーっとぉ、『このノートにかきこまれたことは、すべてげんじつになる』……ですか。」
「どっかでそんなネタあったな。」
嘲笑気味に、少年が言う。 「え? あたし知りませんよ?」と少女が少年を見上げた瞬間、チャイムが鳴り響いた。
「ヤベ、チャイム。」
校舎を見上げた少年が言う。 少女は少年の手からノートを取ろうとした。
「あ。 あたしにノート貸して――」
「ダーメーだ。」
ひょいと掲げられたノートは、少女の手の届かない高さに保持される。 身長150cm弱の小柄な彼女は2回程、跳ねて取ろうとしたが、すぐに諦めて膨れっ面になった。
「けちです。 けちけち。」
「なんとでも言え。」
少年はノートを左手に持ち替え、右手で少女の左手を握る。
膨れっ面のまま、抗議しつつ少女は少年に引かれて教室へと帰った。
「――大体、そのノートあたしが拾ったんですからね。 返してくーだーさーいー。」
「断る。 お前落書きするだろ。」
「いいじゃないですかぁ。 どうせ持ち主なんか分かりませんよ。」
「見付けようとしねえから見つかんねえんだよ。」
そんな会話をしながら教室に入ると、まだ教師は来ていなかった。 楽しげな会話でざわめく生徒達の前を通り、自分達の席に座る。
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