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「70cmくらいが妥当ですかねー♪」
ご機嫌な彼女はステッキの横に『全長70cm』と走り書きした。
「またどっかしらで見たような物」
少年はそこで言葉を切った。 少女も唖然としている。
ノートが淡く光り始め、少女の描いたステッキの絵を中心として煌々と輝き出したのだ。
何だ、これは――
少年と少女が見ている中、紙の繊維を断ち切る音と共に描いた通りのステッキがノートからゆっくりと生み出された。
最後、球体の構成が終わり、倒れてきたステッキを少女は受け止める。
「( 。 。 )」
「( ゚д゚ )」
「こっちみんな。」
少年はただそれだけ言って、ノートを見た。 紙から構成された筈なのに、ページは皺一つ無い。 先程書き込んだ文章とステッキも、変わりなくそこにある。
「おい、杖貸せ。」
「あ、はい!」
少年はステッキを持った。 プラスチックのようにしか感じられない軽さだが、近くの机を叩いてみると、鋼鉄のような硬度がある事が分かった。 シンボルの月は紙レベルの軽さだが、硬度的にはコンクリートだ。
明らかにこの世に存在する物質ではない。 リボンも肌触りこそ布で、振れば靡くが、けして解けない。
大体、どうやってくっ付いてんだ。
リボンは縛っている訳では無く、蝶結びだけを棒に付けている。
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