海からの波

6/25
前へ
/25ページ
次へ
失礼な。 声楽部だって、一応活動している! …と言いたい所だが、吹奏楽部で日夜練習に励んでいる里未からしたら、声楽部なんて活動していないも同然だろう。 …それに、先生の都合で休みが多く、今日も例によって休みだったので否定できないのは事実だ。 「まぁ、ね」 私はそう答えとく。 「今回は出張らしいよ?」 「…あの人、部活の顧問やる気あんのかな…。もうここまで来たら顧問代わった方がいいんじゃないかな~」 里未があまりに真剣に言うので、つい面白くて笑ってしまう。 「あはは!」 「笑い事じゃないって!」 そう言った里未だが、私の笑いに吊られ、最終的に二人して大笑いした。 二人しかいない教室に響く笑い声は、本当に楽しいはずなのに反響するせいなのか、何故か切なく感じる。 窓から見える空では、雲がゆっくりと風に流されていた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加